その他山口市内の地域資源
大内弘世の時代、日本を訪れた明使趙秩は、1372(文中元)年冬から翌年秋にかけて山口を訪れ、その景観を十境として漢詩に読みました。
山口十境の詩
一、清水の晩鐘(宮野下恋路)
二、氷上に暑を滌く(大内氷上)
三、南明の秋興(大内御堀)
四、泊瀬の晴嵐(宮野江良)
五、猿林の暁月(古熊)
六、象峰の積雪(大内川向)
七、虹橋、水に跨がる(天花)
八、鰐石に雲を生ず(鰐石)
九、梅峰の飛瀑(法泉寺)
十、温泉の春色(湯田)
十境詩
◆ 一、淸水晩鐘《宮野下恋路》
- 淸水晩鐘
暮雲疎雨欲消魂
獨立西風半掩門
大内峯頭淸水寺
鐘聲驚客幾黄昏清水の晩鐘
暮雲疎雨、魂消えんと欲す
独り西風に立てば、半ば門を掩ざす
大内峰頭、清水寺
鐘声、客を驚くすことに幾黄昏
◆ 二、氷上滌暑《大内氷上》
氷上滌暑
光凝山罅銀千疊
寒色淸人絶欝蒸
異國更無河朔飮
煩襟毎憶玉稜層
氷上に暑を滌く
光は山罅に凝れり、銀千畳
寒色は人を清やかにして、欝蒸を絶つ
異国には、更に無し、河朔の飲
煩襟には、毎に憶ふ、玉稜層
◆ 三、南明秋興《大内御堀》
南明秋興
金玉樓臺擁翠微
南山秋色兩交輝
西風落葉雲門静
暮雨欲來僧未歸
南明の秋興
金玉の楼台、翠微を擁し
南山の秋色、両つながら輝を交ふ
西風、葉を落として雲門静かなり
暮雨、来たらんと欲して僧未だ帰らず
◆ 四、泊瀨晴嵐《宮野江良》
泊瀨晴嵐
非烟非霧翠光迷
谷口雲連日影低
都道嵯峨山色似
依稀疑是洛陽西
泊瀬の晴嵐
煙に非ず霧に非ず、翠光迷ふ
谷口に雲連なりて、日影低し
都べて道ふ、嵯峨、山色似たり
依稀たり、疑ふらくは、是、洛陽の西なるか、と
◆五、猿林暁月《古熊》
猿林暁月
曙色初分天雨霜
凄々残月伴琳琅
山人一去無消息
驚起哀猿空斷腸
猿林の暁月
曙色、初めて分かなり天の霜をして雨らしむる、と
凄々たる残月、琳琅を伴ふ
山人一たび去って、消息無し
驚起すれば、哀猿空しく腸を断つ
◆六、象峯積雪《鰐石対岸》
象峯積雪
夜來積雪象頭峯
老却溪山變玉龍
便欲乘龍朝帝闕
瑤階瓊宇更重重
象峯積雪
夜來の積雪、象頭の峰
老却したる溪山、玉龍に変ず
便ち龍に乗り帝闕に朝せんと欲す
瑤階瓊宇、更に重重
◆七、虹橋跨水《天花》
虹橋跨水
盤浸甃玉按東流
鞭石尋仙興未休
借得紫虹飛欲去
扶桑何處是三洲
虹橋、水に跨がる
盤浸甃玉、東流を按む
石を鞭うち、仙を尋ねて興未だ休まず
紫虹を借り得たり、飛んで去らんと欲す
扶桑、何れの処か、是、三洲
◆八、鰐石生雲《鰐石》
鰐石生雲
禹門点額不成龍
玉石流溪任激衝
自是煙霞釣鰲處
幾重苔蘚白雲封
鰐石に雲を生ず
禹門の点額、竜と成らず
玉石、渓に流れて激衝に任す
是より煙霞、釣鰲の処
幾重の苔蘚、白雲封ぜり
◆九、梅峯飛瀑《法泉寺》
梅峯飛瀑
銀河誰挽玉龍翔
白練懸崖百尺長
噴向梅梢雨花落
濺人珠玉帶淸香
梅峰の飛瀑
銀河、誰か挽く、玉竜の翔
白練、崖に懸かれり、百尺の長
噴は梅の梢に向こうて、雨花落つ
人に濺ぐ珠玉は、清香を帯びたり
◆十、温泉春色《湯田》
温泉春色
山川秀孕陰陽炭
天地鑄成造化爐
誰獻玉鴎天寶後
派分春色到東隅
温泉春色
山川、秀孕たり陰陽の炭
天地、鋳成せらる、造化の炉
誰か献じけむ、玉鴎、天宝の後
派分して、春色、東隅に到る
山口十境詩に関する場所には顕彰碑が建っています。これは平成15年1月に山口市により発表された「大内文化まちづくり推進計画」に基づき、2003年度から2013年度にかけて大内文化まちづくりプロジェクト実行委員会により顕彰・建立されたものです。
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